2020.9.

「共 育」

私には小さい時から運動能力がなかったらしい。家中みんな運動音痴。

幼稚園の時先生から「まさこちゃん、行進の時は右手と右足を出すのではなくて足が右なら手は左よ。練習してね」と言われたけれど意味がわからないまま本番運動会。終わってから母が「恥ずかしかった」と言ったけどこれも意味わからん。何しろ背だけは一番で、いつも先頭だから他の人がどう歩いているのか見てないから。「ぼーっと、生きてるんじゃないよ!」と叱られそうだけど。

私が以前、ほんのちょっとだけ園長をさせて貰っていた幼稚園での子ども達の事をイロイロ思い出す。園では年長になると親と一緒に竹馬を作り、これに乗れるようになって卒園するという行事が伝統的にあった。近所の人が竹林から竹を調達してくださり、お父さんを中心に竹馬作りをする。なかにはお母さんやお爺ちゃんと作ることもある。でも自分だけの竹馬。初めは乗るところが地面すれすれ。上手くなるにつれてそれはどんどん高くなり1メートルも高くなる子も。バランスをとり、リズムを考え自由に乗りこなす様になるには、それなりの練習が必要。私だって子どもの頃お爺ちゃんに作ってもらって乗ったことがある。乗れる・・はず。「チョット、やらせて!」と10センチ位の高さの竹馬に乗ってみたけど両足を乗せて静止していることも出来ない。怖くてすぐ諦めた。「園長はそれよりも子どものサポートしなきゃね」と勝手に理由をつけて。

直ぐに乗れるようになる子、家でも作ってもらって練習に励んでいる子、友達が支えてくれたり教えてくれたりして、1ヶ月位で高さはともかく、ほぼ全員出来る様になってきた。でも一人だけ乗れない子がいる。チョットやってみるけど、上手くいかない。みんな楽しそうに園庭をノッシノッシと歩いているのを竹を抱えながら見ていたその子の気持ち。私の出番!と思ったら数人の子が側で何か言い始めている。一人がやってみせる。試してみる。またやってみせる。試してみる。手の位置、足の乗せ方、やってみせる。一瞬一歩二歩前に進んだ時、みんなから拍手と「できたー」の声。数日のうちに全員が当たり前みたいに園庭を竹馬で歩いているようになった。見て学ぶ。励まされて前に進む。教えられるのではなく、大人からの教育でもなく、共育の現場だった。

私だって前で正しく歩いてくれるひとがいたら、カッコよく歩けたのにな〜!




横山眞佐子















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