2016.09.

「おかーちゃーん」

「おかーちゃーん!おかーちゃーん!」大きな大きな泣き声がこどもの広場に響き渡り、思わずどの 子が?って見に行くと、小さな男の子がお母さんの首っ玉にしがみついている。可愛いなあ?。おばあ ちゃん気分。聞いてみると、お兄ちゃんにも、弟にも本を一冊自分で選んでいいよと言ったら、お兄ち ゃんはサッサと好きな本を選んだけれど、弟(1 歳半)は玩具がいいと。「今日はそれはダメ」と言った 途端の大泣き。お母さんの一言で悲しくなり、でもその悲しさを慰めてくれるのもお母さんの腕の中と 知っている。「おかあちゃん」という魔法の言葉。そのうち泣き止んだので、本箱から何気なく、車の本、 恐竜の本、動物の本、カラフルな本、と色々出して、その子に勧めてみる。チラッと見るけど違うんだ よね!と心が動いてない。その内本箱から次々出てくる本に関心が向き始め、あっという間にお母さん の腕から離れ、迷う事なく背表紙だけ見て一冊の本を引っ張り出す。お兄ちゃんが横から「これ、幼稚 園にあるね」弟はお母さんにその本を押し付けて暗にこれにすると示している。

子どもの選択能力には時々舌を巻く。あれこれ、迷う事もあるけれど、大人ほどではない。好きか嫌 いか、知っているか知っていないか、好奇心の満たし方がよく分かっているかのようだ。「くれよんのく ろくん」を袋に入れてもらいすっかりご機嫌に。お兄ちゃんとお父さんと広場のおもちゃでたっぷり遊 び、出口ではニコニコしてバイバイ。

学校で実施していただいている「選書会」でいつも感じる事がある。「選ぶ」ということ。自由に選べ ることがどんなに人の心をワクワクさせるか、その時の自分の中の判断基準は様々だけれど、それぞれ が自分の気持ちを探りながら一冊の本にたどり着く。経験や知識が深まればカンも働く。「自分が選んだ」 という大切な誇りと満足感を子ども時代に積み重ねていけば、きっと自分を肯定したまに大失敗の難し い本を選んでも再チャレンジできるようになるのではないか。

「おかーちゃーん」に動じずしっかり抱きしめるお母さんと遊びに夢中で付き合うお父さん。素敵な ご両親でした。




横山眞佐子











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