2020.2.

「アメニティー」

 先日滋賀県大津市のホテルを貸し切る状態で『第 24 回 アメニティー フォーラム』が行われた。『こ どもの広場』が始まって以来の北岡賢剛という友人たちが着々と年数を重ねながらこの 40 年近く行動し、 発信し、一歩一歩が大胆でもあり細やかでもある活動をしてきた成果だった。

 滋賀県出身の糸賀一雄という障害福祉に取り組んだ先駆者が「この子らを世の光に」という有名な言 葉を私たちに残している。その言葉を実践して子どもが成長して老いていくまで必要な寄り添いをして いこうとする人たちなのだ。一人も取りこぼさずという思想。子ども、大人、若者、老人。障害も健常 も。アートも演劇も映画も音楽もダンスも全てに垣根がない状態で私たちに差し出されていた。

 二泊三日のプログラムは一口では伝えきれないほど多岐に渡ったものだった。

 アメニティーとは快適性や魅力ある環境という意味で「誰にでも快適な環境フォーラム」とでも言お うか。この「誰にでも」がすごいのだ。

 プログラムは講演、セッション、対話などでぎっしり。会場に足を踏み入れた私は圧倒されてどこに 行ったらいいのかオロオロした。見れば車椅子の人も身体が自由に動かない人も聾や盲の人。ネクタイ スーツの人もいれば、フランス語や英語が飛び交い 1500 人もの人がそこらをうろうろしている。逃げる ようにして美術展のコーナーに入って展示されている絵を見始めた時、私の心のタガが外れた。タガと いうか、日頃持っている自分という個を守ろうとするものが外れて見る絵の中に引き込まれ、描き手の 側にいて幸せな自分になっていた。障害者や老人には親切にというどことなく上から目線の思考を振り 捨てるにはどうしたらいいのか。二日目ミュージシャンの小室等が障害の有無に関係なく人間の持つ力 を発揮する人たちとセッションを始めたとき、誰もが持っている一つずつの命が燃えるのを見てさらに 幸せが増した。現実の困難さをこっそり支えるものが文化と言われるものだと思いつつ琵琶湖を後にし た。子どもの本屋に何ができるか?

 ※『アメニティー フォーラム』をネットで調べてね。




横山眞佐子











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