2015.01.

「ロングセラー」

 あっという間にもう二月。
時が先へ先へと進んでいく、その速さに驚きます。
「これは素敵な本だ」と思っていても、すぐにどこかに忘れ去られてしまいかねない、そんな怖さも感じます。
でもロングセラーと言われる子どもの本は既に40年50年経っても今の子どもにとって新しい出会いをもたらします。
まるで時の隔たりがないように古びず子どもの心に届くからです。

 そんな作品を書いてきた作家、画家が一人、また一人と去っていくのが寂しく惜しまれます。

 昨年2014年に亡くなった、私たちの傍らで子どもへのエールを送ってくれた人たちを振り返ってみました。

 1月には詩人の吉野弘さん。
「祝婚歌」は結婚する二人へのエールです。
「I was born」娘が生まれた時の父親としての喜びと希望に満ちた詩。
吉野弘さんの詩は何気ない現実を言葉にすることで、読んだ人それぞれの心の奥にあった感情を揺すぶるものでした。

 2月にはまど・みちおさん。
その訃報を聞いたのは小学校での選書会の最中でした。
山口県周南市の生まれです。
「ぞうさん」「一年生になったら」などの他に数え切れないほどの詩を書かれています。
その全詩集は厚さ10センチにもなるほど。
誰も気に留めないような小さなものに目をむけます。
ひさしのかど「トンボとそら」や死んだ蛇を土に埋めた後、口の中に入っていったアリはどうなったのか「ヘビ」などユーモラスな中に生きていることの寂しさを詠います。

 6月、古田足日さん。
「おしいれのぼうけん」は集団生活に中で起きる子どもの心の全てが書かれています。
ケンカ、先生の叱責、涙、誇り、恐怖、乗り越える勇気、そして友達との深い友情。
これを読まないで幼児期を過ごしてはいけませんし、保育士さんや先生はこの中からあの子やこの子のことを重ねて読んで欲しい。

 7月、安西水丸さん。
あかちゃんの絵本「がたんごとんがたんごとん」は逸品です。

 朝倉摂さん。
舞台芸術家、画家として有名ですが、絵本の絵も。
石井桃子さんとの「三月ひなのつき」松谷みよ子さんとの「たつのこたろう」など。

 8月、米倉斉加年さん。
俳優でありながら、絵も文も、凄みのある深いものを。
「おとなになれなかった弟たちに」戦争中10歳の兄は赤ん坊の弟のミルクを盗み飲み、弟は栄養失調で死ぬ。
子どもの見た戦争の哀しみは米倉さんの体験から。

 もう新しい作品を手にすることはできないけれど、残された作品をロングセラーにしていきたい。
と、新しい二月に。




横山眞佐子











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