2020.7.

「出来ない」

 「今から 30 年前、「子どもの広場シンポジュウム」と言うタイトルで、一泊二日のシンポジュウムを開いて いた。若くて、なんでも思いついたらやってみる!失敗なんて考えてなかった。でも幸せな事に依頼した講師 の先生方も周囲の人達も面白がってその小さな渦に巻き込まれてくれた。なんと毎年全国から 300 人もの大人 と子どもが集まり熱くさまざまな事を語りあった。

 ある回に来てくださった評論家の加藤周一さんに、当時はまだ広がり始めたばかりのペットボトルをお渡し したら、「ボクはこの蓋が苦手で。開けられないの」と。このボトルを開けてあげながら私は「こんなに簡単 に捻るだけなのに!」とチョット不思議に思った。ふと気がつくと今の私自身がペットボトルの蓋のみならず、 手首を使って捻る、爪の先を使って開ける、などの当たり前に出来ていた事が出来なくなってきている。「す みません。この蓋開けてください」とお願いする事が増えてきた。その年代にならないとわからない身体の変 化というか、衰えというものがある事を思い知る日々。

 しかし、とはいえ・・・出来なくなってきた事が増えていく一方で、若い時代には考えが及ばなかった事が 沢山ある事に気がつく。

 約 30 年前からペットボトル入りの物はどんどん増えていった。おいしいお茶と言えばペットボトル入り。 コーヒーも紅茶も。お茶の葉を急須に入れて適温のお湯を入れて・・・なんて面倒な事はしなくても結構美味 しいお茶がキュッと蓋を開けるだけで飲める。自分では買わないつもりなのにゴミ捨て用の分別袋が何故か 1 ヶ月でいっぱいになっている。日本ではペットボトルのリサイクルは結構進んでいると言われているが、それ 以外のリサイクルされない、あるいは無自覚に捨ててしまわれるプラ製品が辺りに満ち溢れている。

 今月からポリ袋は有料に。子ども時代を思い出すと買い物はカゴ。豆腐は鍋持参。水は水道から。いや、井 戸から?新聞紙は貴重な包装紙になり、何もかもが大切な「物」で簡単には捨てることはなかった。 ペットボトルの蓋が開けられなくなったのを機に、水筒に。あ、水筒も蓋が!!!




横山眞佐子















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