2012.12.

「真似」

 「ダダ〜ン バビューン」他に誰もいない4歳の教室で一人の男の子がポーズをきめている。

 先日出雲市の幼稚園に伺った時のこと。
「君は誰ですか?」尋ねる私に
「 ◎※△●‥!」言われてもわからぬヒーローの名前らしい。
「その持っているものはなに???」
「ドリルと●☆※△‥!」
ドリルは分かった。それはペットボトルをTの字形に組み立てたもの。
ハンドル部分を片手に持って再びポーズ。もう一つの手にはボトルからはがしたフィルムをつなげたヒラヒラした不思議なものを。
「誰と戦っているの?」答えはなく、うるさいオバサンだと思われているようだ。
自分だけの戦いに武器も物語も持たない大人は必要ない。
しばらく見ていたけど、立ち去ろうとした時、彼は急にドリルを反対に持ち替えて
「掃除機にもなるんだよ!!ほんとは武器じゃなくってさ!」と叫んだ。
ちょうど教室に入ってきた女の子に「掃除してるんだから、汚さないで!」とすっかり掃除をしている家庭人になっている。

 こどもの想像力、と言ってしまえばそれまでなのだが
「●☆※△‥!」という武器も「掃除機」も大人が生み出したもの。
幼い時の学ぶ力の強さは、ちょっと目にしたり、誰かがしていたり言ったりしたことをすぐに真似して、自分のものにしてしまうこと。
言い換えれば環境がこどもの感性を育てているといってもいい。
テレビやゲームで目にするものも、お母さんがみんなのためにしてくれる家事も、子どもにとってはやって見たいと思う手本。
その上、新たに登場した知らないオバサンは武器のことはわからないみたいなので、瞬時に掃除機に変えてしまう賢さまで持っている子ども。
こんな子どもに真似されてもいいだけの大人だろうか? 自信ないなあ。

 一年が終わる。12月は日本の舵がまた大きく変わった。
というよりこれでは、また元に戻ってしまった。
目の前のことに敏感に反応するのはいい。
でもその自分がしたことが未来にどんな風に影響を与えるのかを考えることができるのが、大人なのではないだろうか。
武器から掃除機にかえるならいいが、掃除機を持ち替えて武器にするのはやめたい。

 どんな2013年になるのか。先が見えない。でも、良いお年を!



横山眞佐子











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