2020.4.

「共 感」

 我が家から出ると大きな楠が新緑の枝を広げて気持ちの良い風が吹きすぎます。空は?。行きつけの魚や野 菜を置いているお店屋さんの前にはお店のお兄さんと喋りながら冷蔵ケースの中の魚を選んでいる女性が。次 の人は野菜を。我が家もイカの刺身と美味しそうなグリーンピースを買いました。普通の風景です。

 こどもの広場にいつも家族で来る近所の男の子が一人でやってきました。他に誰もいない本箱の前に座り込 み、夢中で次々とシリーズ物に手を伸ばしています。「k ちゃん、ひまなん?」聞いても返事もしない。1 時間 ほどして、急に一冊持ってやってきました。「これ、今度買ってもらって読むから、今読まない!」時間潰し に読み飛ばすのと自分の本として大切に読むのとは違う。このキッパリしたこどもの選択が素晴らしい。沢山 の読んだ経験があっての選択眼、あるいは直感のようなものが磨かれて行くのか?普通になって欲しい風景。

 毎日毎日、テレビや新聞が伝えてくれる新型コロナウイルスの情報に、ついビクビクしては耳をすましてし まいます。何しろ今まで経験したことのない事態で先が見えないのですから仕方ありません。こんな時人間は 弱く、未経験の事が起きると恐れのあまり理性を失いますね。マスク、トイレットペーパー、消毒薬の買い占 めに走る。まことしやかな話がネットで拡散する。どれをとっても自分自身もその当事者になる可能性があり ます。外的な恐怖や疑念が内面の弱さを引き出してしまうのですね。「みんなやっているから・・」「あの人の せいで!!」理性と感受性が両方必要な時です。

 友人のお連れ合いが入院されています。でも面会にはいけません。闘病中の人にとって医療と同じくらい、 家族との何げない会話や笑顔は大事な薬です。友人は毎日 1 時間かけて病院に出かけます。窓際で顔を寄せる 病人に外から笑いかけ、聞こえなくても話しかけて手を振り合う。ほんの少しの時間、涙ではなく笑顔を共有 する事で、二人とも明日を心待ちする事ができると。

 理性と、誰かと共感できる感性を今、大切にしたいと思います。皆さんお元気で。空を見上げて。




横山眞佐子











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