2016.10.

「ニオイ」

 チョット朝寝坊して布団の中でぼんやり目が覚めた時、鼻が異変を嗅ぎ取って慌てて飛び起きる。台 所に行ってみると流しに真っ黒になったお鍋が!「お味噌汁が・・」と母。ウへー!!

 いやあ〜火事にならなくてお鍋でよかった、とホッとしたけれど、その焦げくさい臭いは危険な感じの臭い。窓などを全開したけれどなかなか臭いは消えない。しばらくは火事場のような家で過ごす。

 漁港が近くにある小さな学校に行った時、先生が「うちの学校、落し物ゼロです」と。私の子ども時 代は鉛筆一本大事だったから名前を書いて、なくなったら大探ししていたけれど、近頃は鉛筆や消しゴ ムだけではなく、体操服や下着までだれも持ち主が名乗り出ないらしい。「自分の物」という愛着がない し名前も書いてない。でもこの学校には探偵がいるという。どんな物も「クンクン」すると「○○○○くんの物」と匂いでわかるそうだ。持ち物にはその持ち主独特の匂いが付いて、忘れ物、落し物は持ち 主を見つけてもらえるらしい。素晴らしい嗅覚。「におい」は「匂い」の時もあれば「臭い」のときもあ る。多種多様で人によって好き嫌いがあったりもして複雑。チーズの匂いが好きな人も嫌いな人もいる。 自分の汗は平気だけど他人の汗臭さは勘弁!なんてね。いやいや、お母さんが赤ちゃんのお尻に鼻をつ けて「くちゃーい!ウンチ出たねー」なんて言ってる時はすごく幸せそうだし、こどもがお母さんの髪 に顔を埋めてこの匂い好き?。としがみついたり、ニオイは大切。でもイジメの決まり文句は「クサイ」。 言われたらすごく傷つく。だからか近頃は洗濯の時に使う芳香剤が強烈。「動くと薫る!一日中匂う!」 大勢の人が集まるとあっちでもこっちでもその匂い。これで自分のニオイを消すことが出来きて、皆ん なと同じニオイになり安心?

 本当に地球上は様々なニオイで満ちている。季節の匂いをかぎ分け、密かな花の香りを楽しめるとい い。金木犀や沈丁花を見るより先に匂いで知る。雨の匂い、土の匂い。昆虫の、動物の匂い。深呼吸し て空気の中から好きな匂いを探して多種多様なニオイを好きになって欲しい。今日も家のそばの楠の落ち葉を踏んだ一瞬に一日の終わりを感じる。




横山眞佐子











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