2018.3.

「あそぼうよ」


 沖縄県糸満市にある小規模保育事業所「いっぽ保育園」に、3カ月ぶりにお邪魔した。

 0歳さんから2歳さんまで定員 19 名のちいさな保育所の中で、子どもたちのひと足ひと足 が大切に見守られ育てられている。絵本を読みあうとそのことがひしひしと伝わってくる。

 前回 11 月に訪問した時は、たのしくたのしく絵本を読みあったあとで、つい調子に乗って ゲンコツをかざし、指を一本ずつ出して「ハチがぶぃ?ん」をやった。子どもたちは、目を真 ん丸に見開いて「ぶい?ん」の行方を追っていたのだが、私のぶぃーんの親指が担任のマリ先 生のほっぺたをブチっと刺した瞬間、お部屋の空気が哀しみ一色に変わった。「僕らの先生に 何するのん!」という幼い怒りが、束になって私に押し寄せてきた。すっごいな?。マリ先生、 みんなに愛されてるなぁ?と感動したのだった。

 さて、そのいっぽ保育園でのふたたびの読みあい。だいじょうぶかなぁ?。あ、あの時のマ リ先生をいじめた「ぶい?んバチ」が来たと怒られないかなぁと、ドキドキ。

 でも、みんなにっこりふんわり受け入れてくれて、一安心。どの子も3カ月で大きくなった なぁ、とびっくり。確かに、幼いながらも絵本への信頼感が加わった、落ち着きある聴き手に 成長している。うまく言えないが、ページをめくったら、次に何か新しいことが待っていると いうことを知っていて、その新しいことを目と耳と心を通して受け入れる準備ができていると いった感じなのだ。そこで、『どっとこどうぶつえん』を読んだ。「どっとこ どっとこ どう ぶつえん」と節をつけながら、見開きごと読んでいくと、だんだん子どもたちのからだが「ど っとこどっとこ」にあわせてリズミカルに弾んでいく。口をとがらせ「どっとこどっとこ」と 声を出す子も出てくる。そのうち、じっとしているのが苦手な D くんが、みんなの席から離れ て、動き出した。すると、絶妙なタイミングで、前列にいた女の子が

 「どっとこ どっとこ どこいくの」と歌うように呼び止めてくれたのだ。あまりにすてき で、私も先生方も「どっとこ どっとこ どこいくの」を絵本のページを開いたまま繰り返し た。D くん、その声を聞きながら、にこにこっ。どうやら D くんは、絵本の動物園から抜け出 した一匹の動物として、みんなの読みあいからはみ出すことなく、しあわせにいられたようだ。

 いいなぁ?。絵本を真ん中にみんなでいられるのって、いいなぁ?と改めて思った沖縄の一 日でした。

 


「ちびはち」

光村教育図書

1300 円+税


「どっとこどうぶつえん」

福音館書店

900 円+税


村中李衣


















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