2015.05.
「はじめましてのいろいろ」
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新学期です。
幼稚園、保育園、小学校、中学校、高校、大学、それぞれ新一年生のドキドキ。
そしてまた、先生一年生のドキドキもありますね。
今年は娘も高等学校で英語の先生一年生のスタートです。
2年前、どうしてもこの先生の元で学びたいと東京から大阪に居を移して研究科の門をたたいた娘は、オリエンテーションの場面で、最先端の研究をする先生が最初に伝えてくれることばはどんなものだろう?と耳を澄まして待ったらしい。
すると、その先生が静かに語られたことは次の三つ。
ひとつ、いじわるをしない。
ふたつ、巨人の肩に乗りなさい。
みっつ、人から聞かれたことには全力で答えなさい。
「この三つは簡単なようで大人になるほど難しい。
研究は、先人たちの問いと答えの積み重ねの上に成り立つもの。
出発点はあなたではない。
だからこそ成果をひとりじめするような研究の仕方をしてはいけない。
また全力で自分に答えてくれる姿に触れれば、問う人も安易に他者に聞く前にできるだけ自分でなんとかするようになる。
みんなで育ちあっていくのです」
と教えて下さったんだと、娘から何度となく聞かされました。
さて、そんな素敵な教えを受けた娘の教師一日目の教室は、どんなだったのか。
自己紹介の後「何か質問がありますか?」と問いかけると、やんちゃな感じの男子生徒が「先生、彼氏いますか?」と聞いてきたそうだ。
「へぇ、なんて答えたの?」
「『あなたは、どうですか?』と聞き返したよ」
「そしたら?」
「『いません』って。だから、『そうですか、それは残念ですね。先生はいます』って答えたわ」
「ありえん。普通は『ご想像にお答えします』とかいうんやないん?」
「なんで? 聞かれたことには全力で答えんと」
「そ、そしたら?」
「『うひゃ〜、世の中、何が起きるかわからん』って」。
爆笑シーンだが、教える仕事を30年近く続けてきた私には、ちょっとまぶしくてうらやましかった。
たぶん、はじめて人と人が向き合う場面の真ん中で一番大切なことは、語るその内容よりも、そのドキドキを前向きに受け止めあうエネルギーそのものなんだろう。
いっぱいずっこけながら、生徒と一緒に歩いていってね。が・ん・ば・れ。 |
村中李衣
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