2020.11.
はじめての事
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飛行場。着いてまず食事に行き、食べたことのない美味しそうな煮込みを一口。その辛さに思わず水を飲むとさらに口中に広がる。泣いている私をみんな面白そうに見ている。次の料理は小型のピーマン。さらに激辛!チレ・ハラペーニョという唐辛子だった。メキシコでの辛さ初体験。
遊園地。子どもとその友達4人を連れて引率気分。後ろ向きに高く上がりU字型に急降下するジェットコースター。私に怖いものはないと思い込んでいた。次第に身体が地面と垂直に上がって行く。突然恐怖が!自分でも抑えきれずに泣き叫ぶ。となりの一年生の息子が、「大丈夫すぐ終わるから目を瞑っていなさい」と励ますが悲鳴が止められない。
誰でも、どんな事でも「初体験」がかならずある。気づかないまま日々新しいことに遭遇してはそれを乗り越えてきた。楽々と・・の時もあれば、ビビリながら・・の時もありながら。
1979年11月23日、子どもの本の専門店「こどもの広場」をオープンさせた。働いたこともなく、ましてや本屋がどっちを向いているのか何も知らなかったのに。あまりにも無知だったけれど、初体験だからこそやってみるという無鉄砲さが今日まで続いているのかもしれない。
まずお金が無い。それは銀行で借りればいい・・なんて甘い考え。何も無い若い女に、聞いたこともない「児童書の専門店」開業の為のお金を貸す・・?ものの見事に断られ、そのあとも次々と難問が。本はどこに売ってるの?掛け率って何?返品って?本の中に入っている白い紙は何?それでも沢山の人達が手助けや助言をしてくれてなんとか開店にこぎつけた。前途洋々の気分。何しろ中国地方にも九州にもこんなお店は一軒もないのだから、私のところは独占企業っていうんだよね!
ところが初日から失敗だらけで、たかが3冊の本を包もうとするけどぐちゃぐちゃ。ソロバンで計算は間違える。焦ってお礼も言い忘れる。ほとんどが私にとっては初体験。今までいい加減になんとかなると生きてきた自分が、何も出来なかったのだと気づかされてオロオロしている時、本を読んでいた女性が包み紙を折って切って貼って袋を作ってくれていて、3冊本を持っている人は自分でソロバンを弾いて計算してくれている。
あれから40年以上。知識も増えたしベテランになったつもり・・だけど、またしても初体験の事が増えていく。本の注文はネット?作家の講演会がリモート?実物は無くても電子書籍で読書?
でも私はやっぱり、いたずらそうに輝く目のコヨーテの本にするか、上目遣いの下心のありそうなワニの本か、今日の初体験の為の本選びを続けたい。42年目の「こどもの広場」です。 |
横山眞佐子
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