2020.10.

「一緒に生きる」

毎日通る道にいつも草花の手入れをしている人がおられる。自宅の前にはいろんな鉢植え。そこから伸びたゴーヤがこの夏は涼しそうだった。そして二日に一度はご近所の、同年代の方と楽しそうにおしゃべり。一人は箒、一人はシャベルを握って。車の中からだけど二人の楽しそうな笑い声が聞こえそう。お見かけするたびに私まで笑いそうになる。

そして今日は、坂の多い下関の歩道を歩いている二人のお年寄りの女性をお見かけした。一人は杖をつきすり足で、白髪の女性はその脇を支えながら歩いている。二人ともヨロヨロしながらだけれどしっかりと互いを支え合っているように見える。どちらがどちらを支えているのか?「人」という文字は支えあっているから成り立っていると聞いた事があるけれど、まさしくそんな感じ。

この数ヶ月、コロナウイルスの感染の拡大とともに、他者と触れ合う機会が格段に減ってしまった。目に見えない「不安」という怪物が人間の心の中に忍び込んできて、寄り掛からずひとりで生きろと言われているような気がする。それでも、春頃のちょっとパニック状態からは変わってきた?

学校も休校から、午前中解放、そして通常の時間割にと少しずつ日常を取り戻してはいるものの、大人の世界の不安や苛立ちや後ろ向きな気分を浴びていて、昨年までの「子どもらしい」生き生きした行動がちょっとセーブされているような感じ。とはいえ、さすがというか、やっぱりというか、面白いことや好奇心がかきたてられる事に出会うと思わず今まで通り、素のままの自分が出てくる。

ある学校の選書会の時、いつも通り机に並べた5〜600冊の新刊書の中から好きな本、図書館に入れて欲しい本を選び始めたら、一人の男の子がなぜか次々に本をひっくり返して見ている。「何しているの?」「値段。一番高い本を探してるんだ」

長く選書会を開いてきたけど、こんな選書は初めて。面白くて私も思わず高い本を探してしまって見つけた本!「人間図鑑みんなのちがい」(間柴勇輔/絵いろは出版)。体や生活や考え方などあらゆる人間のちがいを集めた図鑑。あっという間に男子たちがみんな投票。集まったところで中身をブックトーク。さらに票が集まった。人間の好奇心はいつも前向きだと思う。どんなに自粛していても、みんなで面白いことに向き合いたい。参加したい。前に進みたい!

本を開いた男の子たちが「モンゴルでは挨拶で匂い嗅ぐんだって〜!」と大笑い。5年生男子。




横山眞佐子















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