2017.6.



 子供の頃幼稚園に行くのが嫌で母を困らせていた。我が家は梅光のある丸山町 の坂のてっぺんにある青いアパートの2階で、出かけたはずの息子が梅光の門で じっとしている姿を近所の町田のばあちゃんに教えてもらった母が慌てて追いか けてきて、横断歩道を挟み「昇っ!!」という顔をしながら近づいてくるので怖 かった。脇を女子高生達が登校しているのもお構いなしに泣きじゃくる私を、仕 方なく母は幼稚園まで連れて行ってくれた。思い起こすと絵が上手に書けなかっ たからとか、独楽を上手に回せなかったからとか、理由は他愛もないことだった のではないかと思うのだが、当時の私は必死で、幼稚園に着いてからも母に私の 傍を離れずそこの電信柱で待っていろと駄々をこね手を焼かせた。私は休み時間 になるたびに母がそこにいるのかを確認しに行くのだが、じっと佇む姿を見かけ ると安心し、いなくなっていると泣いていた。当時住んでいたアパートや梅光の 門、幼稚園の電信柱は今もある。

 5月頃から、旭が学校に行くのを嫌がりだした。怖くて行けないという。理由 を聞いても「5月病かな?じきに慣れるだろう。」と思っていたが、朝が来るたび に不安だと泣き「パパ学校までついてきて」という。「体調が悪そうなので早退さ せて下さい」と学校から連絡があり迎えに行った時もあった。旭は甘やかされて 育ったせいか人に注意されたり叱られたりするのに敏感で、極端に反応すること がある。私もママも彼の不安をなくしてあげようと、楽しいことを話したり、好 きな歌を歌ったり、時に叱り、諭したり色々なことを働きかけて学校に行かせて いる。実際は彼の思いこみの部分も大きいのではないかと思っているのであまり 心配していない。

 この日も「パパついてきて」と甘えてきた。ポケモンの「アローラ」を聞きな がら出かける。不安になったらパパの手を握るんよというと強く握り返してきた。 「大丈夫。パパも昔はそうやったけど幼稚園で一番スカートめくりが上手な男の 子になったぞ」と言うと、きょとんとしていた。

 そんな私が、今、登校する我が子を電信柱の蔭から見守っている。
昇より


















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