2016.06.



 我が家の定番メニューの一つに餃子がある。皮は市販のものだが餡は自家製で、合いび きミンチと刻んだ白菜、にらをボールの中でかき混ぜ匙ですくって一つ一つ皮に包んでい く。食卓を囲んで行うこの作業が結構楽しい。「スイミングのバッジテストどうやった?」 「ラッコさん泳ぎ出来たから合格。バッジもらったよ」「良かったね」「あっ君 宿題なあに?」 「音読と算数」「これ終わったらするんよ」「はあい」思い思いの会話とリズムからプリッ としたものや餡がはみ出たもの、八つ橋のように薄く平べったいものなど三者三様の餃子 が出来上がる。大皿に並べるとそれは不揃いで凸凹して見えるのだが、何だかそれぞれの 気持ちを形にしているようでいて妙に面白い。独身時代、ママの自宅に遊びに行き夕食を お呼ばれした際にこの餃子をよく頂いた。米倉家では焼き餃子と水餃子のみを大量に作り 「餃子パーティ」なるものを開いていて、私も米倉三姉妹に交じり、やったことのない餃 子作りの手ほどきを受けながら、他愛のない話をして親睦を深めたものだ。餡を乗せすぎ ると皮からはみ出すし、皮をひだ状に包むコツを教えてもらい習得するのに手を焼いたが、 「食べれば一緒やけ」「水餃子にはウスターソースが合うんよ」と、みんなで和気あいあい に語りながら出来上がりを頂くとそれは美味しかった。

 ママが台所に立ち餃子を焼き始める。その傍らで旭が音読の宿題「おおきなかぶ」を読 み始めた。「うんとこしょ どっこいしょ それでも かぶは ぬけません」TVを消して聞 き入る私の耳に旭の朗読が心地良く伝わってくる。「いぬが まごをひっぱって まごが おばあさんを ひっぱって・・・」耳をすましているとママがフライパンに水を差したの だろう。ジュッと煙が上がり餃子が焼ける香ばしい音と匂いがしてきた。それらは賑やか しくもあるのだが、確かに在ることの安心感がもたらす静かなひとときのようでもあり、 そのはざまでたゆたう私は何とも言えない幸福感に包まれることがある。

 読み終えた旭が持ってきた「音読カード」に二重丸とサインをしてやると我が家の餃子 も出来上がり。その出来は?もちろん、二重丸。
昇より










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