2012.10.



 先日、ロンドンオリンピック男子マラソンで6位入賞を果たした中本健太郎さんにインタビューさせて頂いた。
中本さんは下関市菊川町のご出身。驚異の粘りの走りは人々の記憶にも新しく、イベント会場では多くの市民に取り囲まれ、少し照れながらもサインやカメラに収まる中本さんの姿はとても微笑ましかった。
静かな佇まいと日焼けした顔から過酷な練習の日々を想像する。
オリンピック後も何かと大変ですねと話を向けると、応援して下さった故郷の皆さんにご恩返しがしたいんですと仰った。
終始控えめに語る態度に益々好感を覚えた。
近況を聞き、開催間近の下関海響マラソンに出場するランナーへのエールを頂きインタビューは終了した。

 実は会場には奥様と生まれたばかりの赤ちゃんも一緒に来ていた。
この度はおめでとうございますとご挨拶すると、ご夫婦は嬉しそうに顔を見合わせ、愛おしそうに我が子を見つめた。
可愛いね、どっちに似てるかな、夜泣きはまだですかなど子育て談義になり、大きくなったらお父さんのようなランナーになるのかな?と赤ちゃんに話しかけると、ニコニコ笑い返してきたので私も嬉しくなった。
その時中本さんが「私の走ってる姿をこの子に見せたいんです。この子の為にも頑張りたい」と仰った。
まっすぐに見つめる表情からロンドンの激走が蘇える。
きっと中本さんは、生まれたばかりの赤ちゃんや産後の奥様の体を思いやりながら、一心に真夏のロンドンの街を走り抜け、最後まであきらめないで頑張り抜く姿勢を我が子に見せたかったんだろうと。
あの時の走りの凄味にはそんな強い信念が宿っていたんですね。
父親としての覚悟のような思いを聞いて家路につく。

 そしてここにも大きくはない覚悟をもってマラソン大会に出場する男がひとり…腰を痛めて思うような練習が出来ずに泣き言を言うお父さんを我が子は何と思うことだろう。
見ると旭は床に落ちていたドングリを鼻に入れてフンフン唸っていた。

 ちょっと救われた気がした。
昇より



















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